クラブの価値を高めるためのリブランディング
クインシーズ刈谷から、アリーザ愛知へ。
6月30日に愛知県名古屋市でリブランディングを発表する会見が行われ、今季から新たなクラブ名とロゴ、クラブカラーの刷新を発表した。
1951年から紡がれてきた、チームの長い歴史を紹介する映像の中では「つなぎ続けた、半世紀の絆」という言葉とともに、皇后杯の優勝や、リーグで喫した悪夢の17連敗、奇跡の残留など、75年に及ぶ長い歴史を振り返る。決して輝かしい時ばかりでなく、苦しく、先の見えないトンネルを歩む中でも諦めなかった先人たちがつないできた歴史を、さらにクラブとして発展していくために新たなスタートとして歩み出す。
映像が流れた後、北河英典代表と荒木絵里香チームコーディネーター、酒井新悟監督、そして今季から新主将への就任が発表された佐藤彩乃が登壇した。まず北河代表から、リブランディングを実施した理由について説明。「昨今のスポーツ業界を取り巻く環境が変わっている中で、よりクラブの価値を高め、愛してもらうクラブでありたい、という思いが結実した」と語り、クラブのミッションやビジョンに込めた意味についても述べた。
「ミッションは、『誰かの前向きな一歩を後押しする』ということ。そしてビジョンは『挑戦を魅せ続ける』こと。挑戦する姿を通して、チームの在り方や やりたいことを体現したいと考え、クラブ名、ロゴ、カラーを変更するという形に至りました」

「アリーザ」に込めた意味
新たなクラブ名である「アリーザ(ALEEZA)」は、Ally(味方・仲間・同盟)とBreeze(波風・疾風)を合わせた造語で、仲間とともに前へ前へと一歩ずつ進む風を起こしたい、という願いが込められている。加えて、クラブ名に「愛知」を入れたことにも大きな意味がある、と北河代表が語る。
「(SVリーグに在籍する)愛知県内をホームとする唯一の女子クラブとして、より広く、多くの皆さまとつながりたいという名前で“愛知”をつけました」
これまで、クインシーズのクラブカラーは赤と青、熱い情熱と冷静さと気品を表す2つの色で長年親しまれてきたが、その歴史と情熱を引き継ぐ色として、新たなクラブカラーはアリーザパープルを採用した。愛知県の花であるカキツバタも同じパープル、ここでも愛知県を代表するクラブとして地域を背負う覚悟が示されていた。
パープルに白地が映えるロゴは、疾風が表現されているシンプルなもの。仲間との連携で生まれる風の流れ、そして勝利へつながる勢い。地域やファンの方々と共に、止まることなく前へ前へと進み続ける意志が造形には取り入れられている。
さまざまな覚悟や夢が詰め込まれたクラブ名、そしてロゴ。新たなスタートを機に北河代表は「子どもたちに夢を、地域に笑顔をもたらす。そんな存在になるために、今日はこれからに向けて大きく、大きく育って行くためのスタート」と意気込んだ。

“つなぐ”力で地域を活性化したい
2016年に選手としてクインシーズに加わり、現役引退後にチームコーディネーターへ就任した荒木さんも「チームの名前が変わると聞いた時はとても驚いた」と口にした後、「爽やかな名前と共に、新たな歴史を築いていけることにワクワクしている」と目を輝かせた。
ちょうどこの会見が行われた日の深夜2時から行われたサッカーワールドカップの日本対ブラジル戦を見て「本当に大きな力をもらった」と笑顔を見せ、「スポーツには社会課題を解決する力がある」と熱く語り、その中でもバレーボールという競技ならではの魅力を語った。

「バレーボールはボールをつなぐ競技で、どんなにすごいエースがいても、レシーブ、トスを上げる仲間がいなければ得点は入らない。ボールをつなぐのは人と人、思いをつなぐことであり、私もこの魅力に取りつかれて競技に取り組んできました。“つなぐ”力はスポーツの枠を超え、みなさんの生活や地域社会で共有できる大切な価値だと思っているので、単なる競技ではなく人をつなぎ地域を活性化する役割を担えるように。小さな風を積み重ねて、大きな風を起こすべく、チーム一丸となって挑戦を続けていきます」
昨季から就任した酒井監督は、事あるごとに「選手、スタッフを含めて非常に素晴らしい人間が揃った、素晴らしいクラブ」と公言してきた。そのクラブが新たに大きな一歩を踏み出す節目に監督として携わることを「素直に嬉しく、大きな期待がある」と口にしながらも「大変な重責を感じている」と言う。日々現場で汗を流す選手たちの努力や、支えるスタッフたちの献身、そして長年愛されてきたクインシーズのOGや関係者、ファンの方々の思いをつなぎ、さらに愛されるクラブになるために、酒井監督の言葉にも熱が帯びる。
「まだ発展途上のチームですが、向上心、挑戦意欲、諦めずに仲間を思いやる心を持った素晴らしい選手が揃ったチーム。思い、伝統、マインドを継承しつつ、新しい挑戦ができればと思いますし、“愛知”を背負い、これまで以上に愛知県民の皆さまに愛され、誇りに思ってもらえるようなチームづくりをしていきたいと思います」

諦めず、前を向いて成長し続けられるチームに
移籍加入して3シーズン目を迎え、新主将となった佐藤選手も「アリーザ愛知としてスタートする年にキャプテンを務めるのは、身の引き締まる思い」と語り、新たな挑戦に向けた決意、そしてこれまでつないできた歴史や伝統に感謝を述べた。
「クラブが大きくなる、伝統をつくっていこうというタイミングでこのチームの一員でいられることが本当に幸せ者だと思いました。今回のリブランディングも、これまで築いてきてくださった方々を始め、たくさんの方々の支えがあってこそのものであり、私たち選手だけのチームではないと実感しました。だからこそ、戦う私たちはどんなことがあっても諦めることなく前を向いて、成長し続けられるチームになりたいと強く感じていますし、チームが強くなっていく過程。そして私たちがバレーボールと向き合う姿勢、勝利に向かって一丸となって戦っていく姿が、誰かの前向きな一歩を後押しできる存在となれるように、私たちは挑戦し続けます」

会見の最後には佐藤選手が新たなユニフォームで登場した。アリーザパープルの鮮やかなユニフォームで迎える新たなシーズンの開幕も、きっと驚くほどすぐにやってくる。昨季の経験を糧に、さらなる成長を遂げるべく。そして、3年後に完成予定の新アリーナを埋め尽くす大勢の方々から愛されるクラブになるために。
皆で、大きな波を。そして、新たな風を巻き起こす――。
アリーザ愛知として、新たな一歩を踏み出した。
取材・文:田中 夕子

