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【鴫原ひなた選手インタビュー 】日本代表、そしてアリーザ愛知への思い 「1点を託される選手になって、背負えるものは背負いたい」

チーム

今季初めて日本代表に選出された、鴫原ひなた。ネーションズリーグ、アジア選手権、アジア大会とすべての大会に出場、さまざまな役割を担い、勝利の喜びも敗れる悔しさも経験した。

代表初年度からオリンピック出場権獲得という大勝負に挑み、アリーザ愛知の鴫原にとってはまさにホームである愛知でのアジア競技大会でもコートに立った。

鴫原は何を感じ、考えながら日本代表として戦っていたのか。そしてその経験を、アリーザ愛知元年の今季にどのようにつなげていくのか。

アリーザ愛知として迎える初のホームゲームを前に、鴫原ひなたが心の内を明かした。

リリーフサーバーからスタートした初の代表シーズン

 代表で自分がどれぐらい通用するのか。どの立ち位置にいるのか。最初はすべて未知数で、アジア選手権やアジア競技大会、先を見る余裕は全くありませんでした。

 

 今だから言えるのですが、実は合宿がスタートした直後の5月上旬に腹筋のケガをしてしまった。練習にも参加できなかったのですが、紅白戦があったので、多少痛みはあったけれどそこで自分のプレーを見せないと先にはつながらないと思って、試合に出ました。案の定、状態は悪化してしまったまま、ネーションズリーグが近づいてくる。監督の立場で考えれば、コンディションが悪い選手を連れていくはずがないですよね。正直に言えば、この状態の自分が遠征メンバーに選ばれるのは無理だと思っていたんです。

 

 でも、(ネーションズリーグが行われる)カナダへ行くメンバーの中に選んでもらえた。できることは限られていたのですが、リリーフサーバーという役割を与えられている中で自分が必要だと思ってもらえたのであれば、たとえ国の代表として戦えるレベルにまだ達していないとしても、やるべきこと、できることがあるはず。

まずはサーブで崩してチャンスをつくる、と思ってコートへ入ったのですが、面白かったのが自分が入る時、かなりの確率で自分のところにボールが来たんです。リリーフサーバーで入っても、サーブを打つだけでレシーブするチャンスがないまま終わる選手もたくさんいる中で、自分のところにはいつもちゃんとボールが来る。

それも「私、持っているぞ」とプラスに捉えて(笑)、その1本を上げるために万全の準備をする。世界のパワー、高さを感じさせてもらったのはもちろんですが、一瞬しかないチャンスをものにできるかどうか。今までとは違う緊張感を、日本代表として国を背負う立場で経験させてもらった。自分にとって本当に大きなことでした。

ロス五輪出場をかけたアジア選手権「私に任せろ」の気持ちで劣勢時のコートへ

 

 優勝すればロサンゼルス五輪出場が決まるアジア選手権。予選ラウンドから始まった中国での戦いで、当初鴫原は、リリーフサーバーとしての出場が主だった。しかし、決勝トーナメントへ入れば、負けられない戦いが始まる。大きなチャンスが巡ってきたのは、準決勝のタイ戦だった。

 五輪出場権を争うライバルに2セットを連取された第3セット、鴫原はアウトサイドヒッターとしてスタートからコートに立った。

 

 日本代表のコートに立つ選手たちは、この数年、アジア選手権でオリンピック出場権を獲るために毎日重いものを背負い続けてきた。もちろん自分も同じ目標のために戦って来たけれど、これがスタートでもあったので、いい意味でそこまで背負うものはない。みんながプレッシャーに押しつぶされそうになっている時だったからこそ、自分は捨て身であるだけのものを出し切るだけ。

 自信があったか、と言われたらそうじゃない。でも、自信がなさそうな顔をしていたらみんな心配するし、どれだけできるかはわからない。それならば、自分が一番自分のことを信じないとダメだ、と思ったんです。

 

 2セットを取られて苦しい状況ではあったけれど、絶対に負けない。「私は行ける、やれる」と、それぐらい強い気持ちと覚悟を持ってコートへ入ったし、少しでもチームにエネルギーを与えたかった。追い込まれているからこそ「ミスをしないように」と小さくなるのではなく、アグレッシブに攻める。タイからもエネルギーを感じていたので、自分たちがさらに上回れるように、ということだけ考えていたし、「私に任せろ」ぐらいの気持ちを持っていなければあの場所、空気感の中では戦えない。とにかく必死でした。

 

 でも結果は、1対3で負け。オリンピック出場権を獲得できなかったことも併せて悔しさはもちろんあったんですけど、それ以上に「申し訳ない」という気持ちが強かったんです。今年初めて代表になって、準備期間はみんなより短かったけれど、自分がプレーする機会を与えられた中で、手にすることができたチャンスを逃してしまった。それが本当に申し訳ないな、って。

 

 この一番大事な試合に自分が関わることができた。その経験は大きいけれど、でも途中から出た以上は、いいプレーをして「よかったね」と言われるだけでなく、勝つまで持って行って本当のゲームチェンジャーになれるし、あの試合を勝つことができたら自分の自信にもなれた。代表に欠かせない存在になれるチャンスだったかもしれない。

でもだからこそ、そこで勝てなかった、できなかったことには理由があるので、自分の課題に目を背けず向き合い続けないといけない。前の自分を超えるためには、これからの自分の努力次第だと改めて思わされた試合でした。

壁に直面した地元愛知でのアジア競技大会

 アジア選手権を終えて、すぐアジア競技大会が始まった。すぐに切り替えるのは難しかったですが、自分にとっては悔しさを晴らすチャンスでもある。しかも日頃から活動している愛知でアジア競技大会という大きな大会に参加できるのは特別なこと。ここでいかに成長できるか。自分がどれだけ勝負できる人間かを見せられる機会だと思って臨みました。

 ほとんどの試合でスタートからコートに立たせてもらったのはいい経験になりましたが、決勝の中国戦は、全然歯が立たなかった。正直に言うと、コートに立つのがつらかったし、全然できなくて、きつい、と思う時間も長くありました。

 

 特に攻撃面は課題しかなくて、ハイセットを打つ場面が多かったのですが、相手のブロックがきれいに揃っている中、今までの感覚で揃っていないところを狙おうとしても隙がない。指先を狙っても高さが違うので、相手の手の中に入ってしまって止められる。試合中からすごく焦ってしまって、タイムアウトの時にスタッフからは「高いところを狙ってもブロックに捕まるから、脇を狙えば決まる」と指示されたのですが、とにかく焦ってしまっていたので頭に入ってこなかった。

1セット目に被ブロックの本数が多かったので「これ以上ミスしちゃいけない」という気持ちのほうが強かったし、タイムを終えてコートに戻る時に自信を持っていたかと言えば「今日は難しいかもしれない。自信を持ってスパイクのスイングができないかもしれない」と、思っていたのも事実です。

 

 冷静に考えれば無理に打たなくてもリバウンドを取って切り返したり、相手の攻撃を封じるためにレフトの選手に獲らせるだけでも効果はあったのに「点を獲ろう、獲らなきゃ」という気持ちばかり先行してしまった。「こうすれば決まる」と言われても思いきりできない弱さも出ました。

 攻撃だけでなくサーブレシーブでも、中国のサーブは高いところからスッと落ちてくるいいサーブばかりで、「こんなにパスが下手だったっけ?」と何度も思わされるぐらいうまくいかなかった。課題ばかりが残った試合でしたが、でもそれもこれからにつながるものであり、あの悔しさを経験したことで「もっとやらなきゃいけない」と意識も高まった。

反省ばかりですが、ここからSVリーグで課題をクリアしていくことがこれからにつながると信じて頑張るだけですね。

 

自分を通してアリーザ愛知を広めたい

 アジア選手権もアジア競技大会も、たくさんの方に見ていただいて、注目していただいたおかげで、終わってからはこれまで以上に声をかけてもらったり、久しぶりの親戚や友人からの連絡をもらうきっかけにもなりました。

 敬老の日が近かったので、おばあちゃんたちにお花を送ろう、とお花屋さんに行ったのですが、きれいな花ばかりだったので自分にも買おうと思って選んでいたら、お店の方が「お疲れさまでした」とプレゼントして下さったんです。

 

 大会の結果が期待されたものとは違ったので、厳しい声があるのも目にしました。でも、自分はこれが初めての代表で、今までならば「鴫原って誰?」というレベルだったのに、自分を知ってもらえただけでも嬉しかった。声をかけてくれて、お花をプレゼントしてくれる方がいたり、快く送り出してくれて、迎え入れてくれたアリーザ愛知の仲間たちもすごく温かかった。悔しいことばかりでなく、嬉しいこともたくさんありました。

 何より、代表へ行くことは自分にとっての挑戦であるだけでなく、アリーザ愛知というチームをもっとたくさんの人に知ってもらえるきっかけをつくりたい、もっとアリーザ愛知を広めたいという思いもありました。

 

 高校を卒業してすぐこのチームに入って、日本代表に選ばれるような選手も多くない中で、ずっとこのチームでやってきた選手が代表へ行くことに価値があると思ったし、チームにとってもプラスになる。

若い選手も多いので「頑張れば私も代表へ行ける」と思えるきっかけになったら嬉しいし、ポテンシャルが高い選手ばかりなので、どんどんこの先へつながってほしい。もしも日本代表で鴫原ひなたという選手を知って、見てみたいなと思って下さった方がいるなら、私をきっかけに他の選手も、アリーザ愛知のことももっともっと知ってもらえたら嬉しいです。

アリーザ愛知元年へかける思い

10月10日、今季のSVリーグが開幕した。

 タイで行われた開幕戦は僅差の末に敗戦を喫したが、長い戦いはまだ始まったばかり。夏場の鍛錬期を経て成長した選手も多く、合流直後の鴫原の出場機会も限られたが、コートでの戦いぶりに「頼もしさを感じた」と嬉しそうに語る。

 23日には刈谷市体育館で初めてのホームゲームも開催される。より多くの人たちと、アリーザ愛知元年を共に進んで行けるように。鴫原の言葉にはアリーザ愛が込められていた。

 

 開幕の2試合を見ていても、選手層に厚みが増したのを感じました。代表から戻ってきてから、みんなが自分の身体に対する意識も高くなっているのを感じたし、プレーも変わった。負けないように自分も頑張らなきゃ、といい刺激を受け、モチベーションになりました。

 今季からは外国籍選手の人数も増えて、また熾烈な戦いになりますが、どんな選手がいて、どんなポジションであろうと大事な1点を託されるような選手になりたいし、背負えるものは背負いたい。次の代表シーズンが始まるまでに、またグンとレベルアップしたね、と周りからも見られるぐらい成長していきたいので、フィジカル面も攻撃面ももっともっと高めていきたいと思っています。

 

 チームとしてもアリーザ愛知という新しいチームになって、“魅せる”ということも1つキーワードにしているので、見て下さる方の心に何か残るように。また来たいと思ってもらえるために、やはり一番カッコいい魅せ方は勝つことだと思うので、勝っても負けても「いい試合だったね」で終わるのではなく、ちゃんと勝ちきることがこれからひとつレベルアップしていくために大事な要素だと思うので、勝利を求めて戦う選手の姿に魅力を感じてもらえるようなチームになりたいです。

 

 代表シーズンを終えて、私は「今年こそ最高の景色をみんなで見に行くぞ!」という強い気持ちを持って帰ってきました。“みんな”は選手やスタッフだけでなく、いい時も、悪い時も支えて下さるファンの方々も含めた“みんな”です。さらに上を目指していくために、ファンの皆さんの応援は本当に大事なので、アリーザ愛知、アリーザ愛知の選手たちを応援してよかった、と思ってもらえるように全力で頑張ります。みなさん、今季も一緒に戦って下さい!

取材・文:田中 夕子